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2009 06,29 |
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アイスクリーム師弟
曽芭の小ネタ? パラレルです。1800字ぐらいありますが、よろしければご覧になってやってくださいーっ ブログが更新前のネタ置き場みたいになってきた…… フレンチバニラのアイスクリームが外気にやられてとろとろと溶けていく。 芭蕉はそんなカップの中身を、ほんのひとつだけ掻き混ぜた。表面がなめらかな液体へ変わり始めていようとも、内側はまだまだひんやりと硬い。プラスチックのスプーンを摘む右手に心地のよい感触を残してくれた。 そのまま、ひと匙分おおきめにすくい上げる。 すると力強い陽射しを受けて、バニラの表面がきらきら光る。ゴツゴツとした形のかたまりだった。ブラウニーとチョコレートファッジとチョコレートクッキーとレインボースプリンクルが入っているのだから、不格好になってしまうのは仕方がない。 「……ンむぁーい」 あまい、と言いたいのか、それともうまい、と言いたいのか、よく解らない一声をあげて芭蕉は実にしあわせそうな顔をした。スプーンごと咥えたままでもごもごやっている。 「つめたぁい」 「行儀が悪い」 ところが本当に冷たい評価も聞こえてきてしまって、緩んでいた頬をむっと引き締める。 「気にすることないじゃないか。こんくらい」 「おっさんに似合う仕草ではありませんね」 「大好きなものに夢中になったら、誰だってこうなるんだから……いいんだよ」 言い訳と照れ隠しとを同時にやりながら芭蕉は、アイスクリームのちいさなカップを、今度はざっくり掻き混ぜはじめた。 「曽良くんだって、食べはじめたらこうなるよ」 「なりません」 「っていうか食べないの? 曽良くんも買うんだと思ってたのに」 「僕はいいです」 「甘いもの、好きじゃなかったっけ」 そのアイスクリームの、甘ったるくないはずもなかった。 特に芭蕉のメニュー選びときたらとんでもない。ただでさえ甘いアイスクリームを方々からチョコレートまみれにして、砂糖菓子までふりかけるのだ。 「ベタついたのは苦手なんです」 「ふーん。美味しいのに」 「見てるだけでも胸焼けがしてきます」 「結構イケるよ、これ。いやホント」 「芭蕉さんのせいで」 曽良は視線を逸らした。 「ゆーと思った」 芭蕉の方は眉をしかめて、表情を幼く拗ねさせる。それなりの年かさであるというのに、相応に厳つい様子がどうにも見当たらない男であった。 「曽良くんなんかキライだっ。もー分けてやらんもんね」 けれども曽良には、意に介した様子など欠片ほども見当たらない。 「ひとつも期待してません」 「しろよ。ちょっとは」 「あまりにも甘ったるそうなので」 視線はアイスクリームの方へと下がって、じんわりとそれを見つめる。 街中の炎天下に溶かされながら、もう半分ほどに減ってしまっているフレンチバニラ。ブラウニー、チョコレートファッジ、チョコレートクッキーのマーブル模様に、あまりにもカラフルなレインボースプリンクル。 やや目に痛い色彩だった。そのくせひどく鮮やかで、毒々しくて、麻薬的だ。 「あとで、芭蕉さんからいただきます。ひと口だけ」 曽良が立ち止まり、やや低い芭蕉の目線を真っ直ぐに見つめた。カップを支える左手の方には視線が向かわない。曽良の双眸は、その薄クリーム色の甘ったるさが吸い込まれていった、芭蕉の唇をとらえている。 先に足をとどめた曽良につられて、芭蕉もまた進むことをやめた。それからようやく、曽良の向けてくる気配に感づいた様だった。 「……ひと口で。あとで、好いの」 逡巡らしき間の次に、先ほどまでの自信の失われてしまった、ささやかな掠れ声が漏れる。 熱気がふたりを包んでいた。足下では、明るいグレーをしたアスファルトがちりちりと焼けている。いくつもの人影が、佇んでいる芭蕉と曽良とをかるく避けながら流れていく。 「あとじゃない方がいいんですか」 「君、は……?」 その声は未だに掠れ、どこか戸惑いがちであるものの、しかし外気とはまた異なった浮ついた微熱を孕んでいた。 「芭蕉さんは、どっちがいいんですか」 めずらしく芭蕉の言うことを遮り、曽良が問いかける。 穏やかなくせに容赦のない。アイスクリームへ差し込まれていくプラスチックのスプーンにも似ていた。しなやかに浅く曲がって、それから、すくい上げる。 「あとで、いいよ」 「あとでも?」 「……じゃあ、あとがいいよ」 「なら、あとでも構いません。僕は」 立ち止まったふたりの男と、ゆるやかに溶けていくカップ一杯分のアイスクリームの両脇を、人影の波は途切れずに挟み込む。あらゆる熱気に囲まれているから、なかなか動き出すことができない。 「今度こそ、胸焼けを起こすかもしれませんね」 じわじわと熱されて渦巻く、休日の街中だった。 どうしてもパラレルになってしまうアイスクリームネタ 世の中あっついですよね! かき氷たべたい! 某店は最近、歌わなくなりましたよね。シンデレラの魔法は嫌いじゃないけど、正直そっちの方がちょっと買いやすいかもしれない……という気恥ずかしさ 地元に類似点がありましたが、最近アイスクリームショップからクレープショップに変身していました。同じ駅(最寄り駅)から同じぐらいの距離に5つぐらいクレープ屋が散らばっています。クレープの天下やー PR |
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