2024 11,26 |
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2009 10,21 |
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チョコレート、抹茶、粒あん。家族へのお土産も込み。近くに新規オープンしたお店のメニューで、粒あん以外は限定商品なんだそうです。抹茶のたいやき(緑)、ギリギリで最後のひとつでした……黒ごまのたいやき(黒)はやっぱり売り切れてて買えなかった! さすが限定メニュー……orz 撮影後、もちろん美味しくいただきました。トースターで焼いてもよし、冷蔵庫で冷やしてもよし! 以下、おりたたみにてネタを失礼します。 よろしければ開いていってやってくださいませーっ 「半分こしよう」 粒餡に膨れたたいやきは、つい先ほどまで目の前に開いていた屋台の、今日の売り物のうち最後のひとつだった。屋台のおばちゃんが、「今日は早くってねぇ」と申し訳なさそうに笑いながら、丁寧に包んでくれたものである。 まだ、ほかほかと温かい。割れば微かに湯気も立ち上ることだろう。 「だから今のうち、冷める前にさ……半分こしよう?」 芭蕉は慎重に提案した。ひとつしかないその菓子の在処が、目の前に佇んでいる曽良の両手の中であるためだ。さすがの彼とて、無理矢理にかぶりついてでも独り占めしてやろうという暴挙までは、まさか起こすまいであろうが。 そうして芭蕉がじっとその整った顔立ちを見上げると、黙したままだった唇は「いいですけど」と呟いて返す。 やがて、概ねは要求の通りになった。 「……ひどくない?」 ところが芭蕉は不満を漏らす。そのやや細い指の間には、たいやきの『下半身』が挟まれている。 「何がですか」 「はんぶんこ……」 「してやったでしょう」 その一方でたいやきの『上半身』、ぷっくり丸まった頭へ口を寄せながら、曽良は平然と言って返した。それからすぐさま、噛みついて静かにもぐもぐとやりはじめる。 ひとつしかなかったきつね色の菓子は、ほぼ違いなく『ちょうど真ん中』から真っ二つに分かれていた。割ってみせたのはもちろん曽良だ。 「だってこのたいやき、尻尾の部分にあんこ入ってないじゃないか……」 芭蕉が呻く。 ケチをしているというよりかは形を整えて安定させるために、尻尾の部分は生地だけでぴっちりと閉じられているようだ。角張った皮の見栄えは確かに悪くもないのだが、たいやきの全長における実に四分の一ほどを占めている。更に『下半身』に限れば、約半分ほどが尻尾の領域だった。 「ぜんぜん半分こじゃないだろ! 不公平だ!」 「僕は半分に割りました」 味わっていたものをしっかりと呑み込んでから、曽良は堂々と言い返す。 「今さら、わがままを言わないでください」 「ふーん。ものは言い様だよな、曽良くんの食いしんぼ」 たいやきのようにぷうと膨れて、芭蕉が拗ねた。 そのまま『下半身』にかぶりつく。すると諦めもついたのか、途端に大人しくなって黙々と口を動かしはじめる。 くわえた獲物を手放さす、ほんの少しずつ噛み進めていくさまはどこか小動物めいても見えた。 餡の詰まっている半分ほどまではあっという間に食べ終えてしまって、今度は尻尾の部分をかじりだす。かりかり、さくさくという小さな音色の後に、もちもちと柔らかい内側の生地まで舌が進むと、何も聞こえてこなくなる。そうした小さな流れを繰り返す。それはそれで楽しいのだろうか、芭蕉は、曽良の横で大人しく無心になっていた。 「……おいしい」 「夢中ですね。子供みたいに」 「おいしいけど、味がない」 「餡が入ってないからでしょう」 「曽良くんがとったんじゃないか」 そんな芭蕉の言葉に曽良は、最後の一口を唇へ放り込むことで応えた。 「あ。ひどい」 抗議には構わず、あっさりと呑み込んでしまう。 「分けてくれたっていいのに」 「どうやって?」 「ちょっとでいいから……」 「もう残ってませんよ。味くらいしか」 「じゃあ、味だけでも」 曽良はゆったりと視線を降ろすと、芭蕉の唇を確かめる。餡でもなければ不機嫌にでもなく、甘いものへの緩やかな期待に、ぷくりとふくれている。 だけでも、などと。 口を寄越せ、と。芭蕉は図々しいくせに頭の弱い物言いをする。 曽良がその唇を吸ってしまうのなら、返すどころか、ちょうど半分の『不公平』に更なるおまけがつくのだというのに。 ひとつしかなかった菓子はもう、上から下まできれいに食べ尽くされていた。それなのに未だ意地で満ちている、熱と熱が。 惜しむように、くらい合う。 元ネタは別の方から、許可をいただいてお借りしました……! この記事に出てくるたいやきの場合、尻尾の中身は時の運みたいな感じです。 PR |
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